寝巻きとしてのアンビエント

2010年代に入ってからというもの、やたらとアンビエントばかり聴くようになっていまに至っている。ウェルネス……といえばいいのか、身体的な安定や充実に対してはてんで無頓着な自分だが、耳だけはそのようなモードになっているようだ。アンビエントといっても「これがアンビエントだ」と銘打って作られる音楽と、とくにそういう打ち出しはしてないけど「そういうもの」として聴ける種類の音楽があり、いちおう自分のなかではそれらを一緒くたにしてアンビエントと呼んでいる。時代によってわりとテイストが違っていて、いろんな方向性があるけど基本的には安らぎを目標設定としているという点では一致しているというのが好きなところだ。しかし、例えばBURZUMなどをアンビエントに入れるならばその基準も適用できるかどうか危ういので、便宜的な解釈でしかないとも付け加えておく。

なかでもよく聴いているのがHarold Buddの“The Pavilion of Dreams”(1978)で、これがいちばん自分のなかでしっくり来ていて揺るがない。あまりにもしっくり過ぎてオールタイム・ベストだとすら認識していなかった。もはや寝巻きとか、お気に入りのコップみたいなものになっているかもしれない(『家具』だ)。ジャズ要素が強いし、もっとボンヤリと形容するならば、官能的なところが好きなんだと思う。12月8日、Covid-19による合併症のために逝去したとの報を受け、ようやく振り返ることができた。これからも聴きます。安らかに。