緊急事態宣言の前に

首相が会見をして、緊急事態宣言の発出を検討すると言っていたが、それにしてもグダグダが度を越している。この身動きのとれなさ、新陳代謝の悪さこそが日本の悪癖であって、そこを総合的に分析した現代日本論が必要ではなかろうか。根拠なく希望に満ち溢れていたり、逆に「このままでは危ないぞ」といった具合に悲観的なだけの主張は多いけど……。つまり、『失敗の本質ーー日本軍の組織論的研究』の現代版のような論考が読みたいのだ。この未来が見えない感じはやはり落ち着かない。

 

昼に全品20%OFFをやっているブックオフへ。関川夏央谷口ジロー『「坊っちゃん」の時代』が全巻揃っていたので、もう読んだことあるけど、思い切ってまとめ買い。大好きなマンガだ。文学者、侠客、会社員、軍人、政治家、社会主義者ーー明治を生きた人間たちが自分の隣にいるように思えてくる。森鴎外言うところの「普請中」、必死に成長する途中の日本が描かれているが、それから100年後の日本がこうやってところどころ機能不全になっている事実に照らして読むとどうにも味わい深い。というか本書は、19世紀の末から100年後ーーバブルの日本のなかで、享楽の時代を見据えながら制作されたものだ。その頃から30年後こうなるともなかなか予想つかなかっただろう。未来って本当に分からない。

 

スパイク・リー監督『ザ・ファイブ・ブラッズ』。米国における黒人の歴史、ベトナム戦争の経験、それぞれの過酷な、トラウマも含めた記憶と歴史認識が激しく衝突し、そのたびに、その場にいる皆の、やりきれないような顔が映し出される。