無と餅の元旦

いつもは実家に帰ったりと慌ただしいのだけど、今回は帰省しないということで元旦は完全に「無」だった。一年に一度こんな日があるというのは精神衛生上よいことだ、と思う。

 

しかし僕は貧乏性なところがあって、完全に何もしないで過ごすことができない。そのため、おもに餅を食べていた。大晦日までに冷蔵庫のなかのものをほぼ食べ尽くしてしまったので、餅を食べ続ける。焼いた餅を、熊本産の「イワナガの醤油」につけて食べる。熊本では馬肉も刺身もこの甘い醤油で食べるようだが、餅につけてもじつに美味い。七味唐辛子もかけたり、海苔を巻いてみたり。

 

小さい頃、空手道場に通っていた。精神力が弱く泣いてばかりいるのを見かねた親に入れられたのだが、それによって精神が鍛えられたかどうかは分からない。あまり良い記憶もないのだが、唯一、年の始めに飾ってある鏡餅を叩き割って、ストーブの上で焼いてみんなで食べるイベントがあって、毎年心待ちにしていた。紙皿に醤油を垂らして、それにつけて食べるだけだ。いまだにそのときの味が忘れられず、餅につけるならきなこよりは醤油を選びたくなる。

 

雑煮も作ってみようと思い立ち、あえてレシピはググらずに想像で作ってみた。といっても、餅と三つ葉しかないので、具材はそれだけだ。昆布出汁で、さっきの「イワナガの醤油」を入れたらとたんに塩辛くなったので「これでよい」とする。そこに焼いた餅を三つ入れて、三つ葉を適当に千切って、皿の真ん中にレイアウトするのがきれいだろう、とinstagramが頭を過りながら落とすと、ハラハラとつゆのあちこちに散らばってしまった。雑煮の絵文字を作るとすればこんなイラストになるだろうというものが出来て、食べてみたら美味しかった。

 

ちなみに昨日(2日)は「100分de萩尾望都」という番組が放送されており、見ていたらすっかり興味を持ってしまい、デビュー作から順に読んでみようと思い立った。じつは家にほとんど揃っている。デビュー時点から、少女漫画のフォーマットにも関わらず、仄かにSFの要素があるように読める。「クール・キャット」という短編に出てくる猫は、大胆な描線でとってもかわいい。猫がメチャクチャに引いたピアノの録音を「アングラのレコード会社が気にいって売り出そうって話なんだよ!」なんてセリフに、60年代後半の自由な雰囲気を感じ取った。